自律協生スタジオ

お知らせ

2023.06.21

Convivi Log vol.1を公開しました

自律協生スタジオでは、プロジェクトの現在地を記述し伝えていくための「Convivi Log」を定期的に公開していくことになりました。

第1弾は、2023年5月19日に行われた「Convivial Design Forum -2023 Spring Session-」での講演をもとに、現在のプロジェクトのビジョンを短くまとめています。

Convivi Log vol.1は下記よりご覧ください。


自律協生スタジオの半年間の活動を振り返る

日本総合研究所創発戦略センター エクスパート 井上 岳一

 

自律協生社会のビジョン

昨年11 月に開設した武蔵野美術大学と日本総合研究所の共同研究拠点「自律協生スタジオ」では、自律協生社 会の実現に向けた共同研究を行っている。自律協生社会は、人口減少・高齢化で縮退する日本社会が持続可能にな るために日本総研が掲げた社会のビジョンである。多様な個人に居場所と出番があり、それぞれがそれぞれに本領 発揮して生きられる社会が自律協生社会の目指すものだが、それは地域のみならず、企業においても重要なテーマ になると考えている。

3 つの地域でのフィールドワーク

実践的な研究をすべく、具体的な地域を設定し、そこでのフィールドワークとモデルづくりを行っている。フィール ドとして設定したのは北海道森町、和歌山県田辺市、熊本県天草市である。この3 地域としたのは、もともと武蔵 野美術大学が学生を送り込むなどつながりがあったことに加え、山と海と町があり、農林漁業が盛んで第一次産業 から第三次産業までを俯瞰でき、日本列島の縮図と捉えられると思ったからである。北海道と南九州と関西という位 置関係も、結果としてバランスの良い選択になったと考えている。

自律協生のデザイン

3 地域での半年間の研究により、自律を促す構造はわかってきた。個への関与と場のデザインの両方が個人の自 律を促し、主体性を発露させる。そこにさらに個の表現を後押しするデザインや編集が加われば、個がその本領を 発揮して輝きを増す(=自律のデザイン)。 自律協生社会の実現においては、このような自律のデザインに加え、他者や技術との協生、官と民との協生を考え、 形にすることもテーマとなる(=協生のデザイン)。

ローカルコレクティブと共創デザインセンター

自律協生のデザインは一過性でなく不断のものとなる。このため、自律協生のデザインを行う主体が地域には必 要になる。この主体を「ローカルコレクティブ」と仮称している。ローカルコレクティブは、町内外のクリエイティブ な人材から成る混成集団で、これを育てるには、学び、交ざり合う場に加え、地域の価値を伝えるメディアなどのア ウトプットをつくる場、そしてそれを公開・共有する場が必要になる。ゆくゆくはこのローカルコレクティブが、地域 の政策形成にも関わる共創の場(共創デザインセンターと仮称)に育つことを目指す。

Convivi Lab

自律協生スタジオでは、現場でのフィールドワークに加え、市ヶ谷での企業を集めた研究会(Convivi Lab)を開 催している。現場で得た知見を企業のメンバーと共有しつつ、企業の現場にも応用可能な自律協生のデザインのあり 方を共に考えている。この研究会は無償で参加できる開かれた場であり、学生も参加している。学生と企業メンバー が懇親し、関係を深めつつ、共に議論する希有な場が実現している。新たなメンバーの参加も歓迎している。


自律協生社会へ向けての課題と可能性

武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所 所長 若杉 浩一

 

縮退する社会で、行政は社会インフラを支えられなくなり、企業も現在のままでは経済的持続性が難しい時代になることは見えている。新しい共同体の存在に希望を注がれているが、一方で今の組織構造や、人材育成では難しいことも周知である。

この半年の間に、北海道森町、和歌山県田辺市、熊本県天草市をリサーチする中で、様々な実態と、課題が見えてきた。

❶ 官民連携が殆ど出来ていない。(マインドセット、経験、制度がない)

❷ 人材育成が硬直している、地域を牽引する人材が足りない。(経済的持続性に偏った教育、人材育成の問題)

❸ 都市部の政策や、コンサルの価値観に煽られ、地域の本質的価値や誇りが失われつつある。(文化的持続性の喪失)

この様な状況下の中でも、組織は閉じた組織内への引力が働き、創造的な立場に職員が立てない組織構造にあると言える。

地域のイノベーションの可能性は、官民連携、そして都市部の人材や経済を誘引する可能性については以下と考える。

❶ 新しい官民連携の運動体「新しい公共機能プラットフォーム、共創デザインセンター(仮)」を組織外設置。

❷ 人材育成のための、新しい学びの拠点、プログラム、プロジェクトの計画、実施。

❸ 地域の価値や、美意識、活動や可能性を地域内外に告知する新しいメディアの創造。

我々はこの様な目標に向かって3拠点での様々なアプローチを実践し、全国の自律・協生社会のモデルとして、研 究活動を行っていく。そして、それを支えていくための人材育成プログラム・プロジェクトのデザインを実施してい く計画である。私たちは経済的有用性のみで地域や社会振興をしてきたが(経済的持続性だけの施策)、それが故、 地域や社会は疲弊し、経済格差、地域格差は、進む一方、それだけではなく社会そのものの、持続性が危うくなっ ている。互いの立場を超え、仕事という枠組(企業、都市部など)みを超えた、自律的(主体的、能動的)な活動、 共同体(文化的持続性)の創造が重要であると、更に認識している。

 


下記のURLからPDF版をダウンロードしていただけます。

Convivi Log Vol.1(pdf)