自律協生スタジオ(Convivial Design Studio:通称「コンヴィヴィ」)とは


美術大学とシンクタンクの共同研究拠点

 自律協生スタジオ(コンヴィヴィ)は、武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所と日本総合研究所(日本総研)が自律協生社会の実現に向けて開設した共同研究拠点です。「スタジオ」と名付けているのは、単なる研究の場でなく、実践、創造を行う場と位置づけているからです。
 コンヴィヴィでは、美術大学とシンクタンクがそれぞれのリソースを持ち寄って活動しています。コンヴィヴィが探求するのは、企業や産業のためのデザインという枠を超えた、人間と社会に本質的な価値をもたらすデザインの可能性です。そして、自律協生社会の実現に向け、地域、政策、テクノロジーを横断しつつ、官と民、発注者と受注者、生産者と消費者、都市と地方、マクロとミクロといった二項対立の先にある、新しい価値共創の仕組みをデザインしてゆきます。


自律協生社会のビジョン

 日本総研は来たるべき社会のビジョンとして「自律協生社会」を掲げています。
 自律協生社会は、人口減少の中でも持続可能で豊かに過ごせる社会のあり方を構想する中で生まれた、ビジョンであり社会像です。
自律協生社会とは、聞き慣れない言葉ですが、「自律」、すなわち自分達の頭で考え、自分達で決めることと、「協生」、すなわち仲間と共に力を合わせることとから成る造語です。自律協生社会とは、自律的・主体的な 個人が、仲間と力を合わせながら、自分達のことは自分達で決め、自分達でできることは自分達でする、自治がベースの社会です。
 自律協生を英語で言えばコンヴィヴィアリティ(Conviviality)になります。コンヴィヴィアリティは、思想家のイヴァン・イリイチが1973年に『コンヴィヴィアリティのための道具』の中で提唱した言葉で、「共に生きる喜び」を原義とします。今では、宴会、陽気さなどの意味があるこの言葉を、イリイチは、人間が人間の本来性を損なうことなく、他者や自然との関係性のなかでその自由を享受しつつ、それぞれの能力や創造性を最大限に発揮しながら共に生きること、という意味で用いました。異質なもの、相反していたものが共存し得た時の和気藹々とした時間と空間。そこで共有される祝祭の感覚。イリイチの残した文章からは、これらを包含する言葉としてコンヴィヴィアリティが使われていたことがわかります。
 イリイチが50年前に提唱したコンヴィヴィアリティを現代の文脈で捉え直し、来たるべき社会の姿として構想したものが自律協生社会です。